双極性障害とは

気分が高揚する躁状態と気分がグッと落ち込んでしまっているうつ状態を交互に繰り返す心の病気を双極性障害(躁うつ病)といいます。なお躁の症状がみられている際の程度によって、双極I型障害と双極II型障害に分けられます。

それぞれの特徴ですが、I型は激しい躁状態が1週間以上続くとされ、日常生活に支障をきたすようになります。この場合、入院が必要になることもあります。一方のII型は、軽躁状態と呼ばれる日常生活にそれほど支障をきたさないとされる軽い躁の症状が4日程度みられるようになります。
なおこの場合の躁の症状は気づきにくいこともあります。これら躁状態とうつ状態が繰り返されるわけですが、うつの状態にある場合は、いわゆる一般的なうつ病(単極性うつ病)との区別が難しいので、診断がつきにくいこともあります。ちなみに単極性うつ病と双極性障害では、治療方法が異なりますので注意が必要です。

なお双極性障害でよくみられる症状は、躁状態とうつ状態がありますが、それぞれの特徴は次の通りです。

躁状態でみられる主な症状

異常に高揚した気分になるのが躁状態です。患者様ご自身は病気であるという自覚はなく、逆に元気で気分が良いと感じています。ただそのハイテンションな状態というのが極端に出てしまうことがあるので、日常生活に影響が及ぶようになります。躁状態とは、主に以下のようなことをいいます。

  • 異常に気分が高ぶっていて、過剰なほど明るく振舞っている
  • 短時間の睡眠であっても疲れを感じることがない
  • 自信過剰になっている
  • しゃべり口調が早く、その内容は支離滅裂である
  • 衝動買い等の浪費癖、ギャンブルによる散財がみられる
  • イライラしているなど、怒りっぽくなっている
  • 重度の場合、妄想や幻覚が現れることがある

など

うつ状態でみられる主な症状

著しく気分が落ち込んでいるのがうつ状態です。このような場合も日常生活に支障をきたすようになります。

  • 激しく気分が落ち込んでおり、興味や喜びも喪失している
  • やることすべてが面倒に感じ、疲れやすい
  • 集中力や判断力が低下している
  • 自分を責め、価値のない人間だと思い込む
  • 睡眠障害(睡眠がとれない、過剰に寝ている 等)を訴えている
  • 食欲が湧かない(食欲不振)、食べ過ぎてしまう
  • このまま消えたい、死にたい等、希死念慮がみられる

など

診断について

うつ状態にあるときは、うつ病との見分けがつきません。ただ双極性障害とうつ病は治療内容が異なるので、しっかり診断をつける必要があります。

この場合、まず問診が行われます。内容としては、現在どのような症状や経過をたどっているか、日頃の生活習慣や家族歴、これまでにどのような病気に罹患していたかなどをお聞きします。また心理検査で患者様の心の状態や性格の傾向等を客観的に評価するなどしていきます。医師による診察結果や上記の検査を踏まえ、総合的に判断して診断がつくようになります。なお、双極性障害と似た症状がみられる病気との鑑別が必要という場合は、血液検査、画像検査(CT、MRI 等)も行っていきます。

治療について

双極性障害と診断された患者様には、薬物療法と精神療法を合わせた治療が行われます。

薬物療法

薬物による治療では、症状をコントロールする働きをするとされる気分安定薬がよく用いられます。種類としては、炭酸リチウム、ラモトリギン、バルプロ酸ナトリウムなどがあります。また躁状態が強く出ているとされる患者様については、抗精神病薬(アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン 等)が使われることもあります。

精神療法

薬物療法と併行して行われます。この場合、患者様が自らの病気に対する理解を深めることで病気そのものをコントロールしやすくする心理教育は、とくに初期の患者様に重要とされています。また、これまでの物事のとらえ方というのを改めることで気分をやわらげ、行動も改善されていくようになる認知行動療法も有効とされています。このほか、同居するご家族の病気に対する理解や協力というのも病状の回復に欠かせません。つまり家族療法もとても重要なものとなっています。

上記の治療法のほかにも生活習慣を見直すことにも注力します。例えば、三度の食事を毎日同じ時間帯にとる、睡眠時間を一定にするといったことは、体内時計を整えることにつながります。これが気分の波というのを安定させていきます。またストレスを溜め込まない対策として、リラックスできる時間や趣味に没頭できる環境を整え、ストレスフリーな状態にできるだけ努めていくことも大切です。