うつ病とは

気分の落ち込みや意欲の低下などが長期間によって続き、それによって日常生活に支障をきたしている状態がうつ病です。

健康な方であっても、気持ちが沈む、元気が出てこないといったことはあります。ただ、このような状態というのは一時的なものです。しかしうつ病の患者様は、数週間にわたってずっと続いてしまっており、自力でこれらを解消していくのはなかなか困難です。

ちなみにうつ病に関しては、日本人の15人に1人の割合で罹患することがあるとされる病気で決して珍しいものでありません。つまり誰でも発症する可能性があり、年齢や性別、職業といったことに関係なく引き起こされるようになります。

原因に関しては、ひとつとは限りません。ストレスをはじめ、患者様ご自身の性格、身体的疲労、ホルモン分泌の変化、神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン 等)の減少が挙げられるなど様々です。また薬剤(ステロイド、インターフェロン 等)の副作用によって、うつ病の症状が現れることもあります。

うつ病でよくみられるとされる症状には、精神的な症状だけでなく、身体の不調もみられるようになります。主に以下のようなもので、2週間以上続いている場合は、うつ病が疑われることもあります。気になる方は、お気軽にご相談ください。

【精神的症状】

  • 抑うつ気分が続く(気分が落ち込み、元気が出ない)
  • 何をしていても楽しいと感じない(興味や喜びが喪失している)
  • 意欲が低下している
  • 集中力や判断力が低下している
  • 自責の念に駆られている
  • 死にたいという気持ちがみられている

など

【身体的症状】

  • 睡眠障害(なかなか寝つけない、目がすぐに覚める、眠りが浅い 等)
  • 食欲不振、もしくは食べ過ぎてしまう
  • 疲れやすく、倦怠感がとれない
  • 原因不明の頭痛や肩こりなどの症状を訴えている

など

検査について

うつ病の診断をつけるにあたっては、問診をはじめ、血液検査、画像検査などがあります。問診では、医師が患者様に対して様々な質問をしていきます。現状みられている症状(いつ頃から出ているか 等)、発症の原因に思い当たる節の有無、既往歴、家族歴、過去にうつ病による受診歴があるかなどをお聞きします。

またうつ症状がみられる別の病気ではないことをしっかり鑑別するための検査として、血液検査を行います。この場合、主に甲状腺機能障害や貧血といった病気ではないことを確認していきます。また、脳血管障害や認知症といった脳の病気の患者様もうつとよく似た症状がみられるので、頭部CTや頭部MRI検査等の画像検査を行うこともあります。

このほか、患者様の性格の傾向、症状の程度などを調べるために心理検査をしていくこともあります。

治療について

うつ病と診断を受けた患者様にとって最も重要なのが十分な休養をとることです。そのための環境調整が必要となるので、ご家族や職場ともしっかり連携をとるなど、周囲のサポート体制の構築も大切です。

治療に専念できる休養の環境が作られると治療の開始となります。内容としては、薬物療法や精神療法が中心となります。

薬物療法

薬物療法では、抗うつ薬が用いられます。種類としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)などが用いられます。同薬を使用することで、脳内の神経伝達物質のバランスを整えられるようになります。
効果に関しては個人差ありますが、いずれにしてもすぐに目に見えて発揮されるというものではなく、徐々に現れてくるようになります。なお上記の薬物に関しては、飲み始めの時期に嘔吐・吐き気、下痢等の消化器症状が副作用として現れることもあります。

また抗うつ薬以外でも、患者様に現れている症状によって、抗不安薬、気分安定薬、睡眠導入剤などの薬物療法も併せて用いられます。

精神療法

休養を十分にとる、薬物療法を行うといったことで患者様の状態は、大きく回復していきます。これらに併せて、精神療法も行うことで、さらなる効果も期待できるようになります。実施にあたっては、患者様の状態などを見ながら医師が判断していきます。その中のひとつでもある認知行動療法では、これまでの患者様の「ものの見方、とらえ方」やご自身の行動パターンを振り返っていきます。その際は、医師やカウンセラー等と対話をしながら行っていくのですが、そのやり取りの中でストレスに対する処理の仕方を学び、実践していきます。

上記以外にも、日頃の生活習慣を見直すことも大事です。規則正しい生活を行うことは、うつ病からの回復を図るうえで欠かせません。例えば、決まった時間に朝昼晩の三食をとる、無理のない程度の有酸素運動(中強度の強さで1日30分程度のウォーキング,自転車、水泳 等)をする、睡眠を十分にとるなど、実践しやすい改善案から行っていきます。